南極ゲーム観測所

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【ネタバレなしレビュー】ループする度に違う宇宙に出会う 〜グノーシア【神ゲー】

クリアしました。プレイ時間は17~18時間くらい。

人狼のプレイスキルによって違うのかな、って感じです。それでもおおよそ15~20時間くらいでひとまずエンディングには到達できるかなと思います。

いいゲームでした。特にストーリー。

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グノーシア:概要

ジャンル

人狼シミュレーター×ループもの×SFの要素を併せ持ったアドベンチャー。

いわゆるノベルゲーではなく実際に人狼をプレイします。

本来人数がいないと遊べない人狼を一人で遊べるという意味でかなり画期的なゲーム。

 

あらすじ

宇宙船で目覚めた主人公は状況を把握する間もなく、船内に人間に擬態する『グノーシア』という存在が入り込んだ事を乗組員のセツから告げられる。

クルーたちによると、話し合いによりグノーシアを特定し、コールドスリープで封印する事が“人間の”目的とのことだが...。

 

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“人間の“と書いたのは理由があって、主人公はグノーシアの役割を与えられる事もあります。

 

実は主人公はループ世界を繰り返しており、話し合いを終える度に役割が再設定されます
グノーシアとして目覚めた場合は、乗組員の全滅がそのループの勝利条件になるわけです。

 

システム

プレイヤーは人狼を模したゲームのプレイヤーとなり、いずれかの役割を与えられます。
話し合いの中で、発言を見送るか、「疑う」・「かばう」などのコマンドによる発言を行う事で、ターンを進めていきます。

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友好度・信頼度・ヘイトと言ったパラメータが存在し、あまりにも発言しすぎると疑われるなどリアリティあるやりとりが展開。

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5ターン経過で1日が終わり、投票によってコールドスリープするメンバーを決めます。

人狼ゲームと同様、全てのグノーシアをコールドスリープさせれば人間側の勝利

残りメンバーの中でグノーシアが過半数を超えればグノーシア側の勝利となります。

 

勝っても負けてもループが発生し、再び与えられた役割でゲームに挑みます。

繰り返しの中で仲間たちの過去や秘密を知っていく事により、物語が動いていきます

 

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各キャラクターの特記事項を埋める事で物語が進む。

 

またループの巻き戻り時に経験値を取得し、パラメータを強化するRPG要素もあります。

演技力・カリスマなど発言の影響力となるパラメータを強くすることで、有利に議論を展開できるようになっていきます。

 

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ステータスはパラメータが6つ。基本的にはどれに振っても有利。中でもかわいげは強力。

 

 

ルールのアンロック具合は丁寧で、徐々に「狂人」や「妖狐」と言った要素が段階を追って追加されていきます。

チュートリアルは15~20ループ程を掛けて丁寧にゲームプレイを通して教えられるので、人狼を知らない人でも安心して始めてOKです。

 

よかったポイント

繰り返し遊べるテンポ◎

1プレイ時間は10分前後でサクサク進みます。もう一回やるか~とついつい続けてしまうテンポの良さあり。

ループ終了時に経験値を獲得する要素も、負けたときの脱力感を緩和してくれるのでコツコツプレイする気になる。

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快適なUIと操作性◎

操作に無駄な手順が少なくてひたすら人狼に集中できるんですよね。

コマンド選びにボタンを押す回数が少なくてすんでいて進行がサクサク。

Switch版は片手持ちにも対応してるし、快適度が高いです。

 

印象的なテーマ曲◎

全体的にマッチしたBGMが多く、曲数自体は少ないもののそれがループの設定にマッチしています。

また一息つける夜時間のボーカル曲がループ世界の儚さにぴったり。選曲がとても効果的。

 

不便でやり直しの効かないオートセーブ◎

不便なのに◎なの?って感じですが◎です。

主人公は延々とループ世界をさまよっており、勝っても負けてもやり直し。強制的に巻き戻されます。

その中では仲間とお互いにとって大切な仲になったり、過去の思い出を聞いたりしてその時だけの関係性を深めることもあります

ところが無情にもゲームが終われば次のループに強制的に巻き戻されてしまう。

 

ループの数だけ巻き戻せない関係性があった。でもそれを記録するものは何もない。

そんな慈悲の無さが上書きのオートセーブというシステムでうまく表現されていてストーリーへの没入感を高めています

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またやり直しが効かないので、必然的に人狼ゲーム自体をしっかり理解していかないと先に進めない事も、歯応えと緊張感を生み出しているのもポイント。

 

底の見えないサブイベント群◎

どんだけ限定的なんだって条件のイベントがザラにあるし、どうやら主人公の性別によっても限定イベントあるみたいだし、とにかく見たことないイベントがポンポン出てくるのが凄い。

しかも選択肢によって展開変わったりするしね。セツとは映画鑑賞を選択したけど釣りも見たかったZE

そうした底の見えなさは、ループする度に違う世界があってリセットすると二度と触れられないという、かけがえのなさに繋がっている。並行世界という設定が上手く表現されている。

 

一度クリアするとそのループ中のみのロード機能が解除されるので、選択肢を網羅していきたい人はひとまずクリアするのがおすすめです。

イベントが多い以上、当然なんですがサブイベント群を支える膨大なCGの数が圧巻。これだけ膨大な量で、個性の強い絵柄にも関わらず質のブレもなく暖かい手作り感が感じられます。

めちゃ贅沢な作りだよこれ。まさにインディー的な大作。

 

超上質なメタフィクション◎

エンディングから真エンディングまでの伏線回収とメタな要素の親和性が見事。切ない気持ちにさせられながら爽やかな喪失感を感じられるこれ以上ない美しい終わり方でした。

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メタ的な仕掛けって大抵の場合、異物として描かれる事が多いんですよね。何かゲーム側からメッセージ性を届ける手段であったり、予想外な驚きを与えて引き込む為のものであったりする。でもこのゲームの場合、メタ的な仕掛けがシナリオと乖離しておらず、終盤プレイヤーはどうすればいいかごく自然に理解できるところが凄く良かった。

ループものからメタフィクションへ移行していく流れもスムーズだし、物語の着地点としてここ以外にはないという場所でフェードアウトしてプレイヤーはゲーム世界での旅を終えます。お見事。

 

気になったポイント

論理的なツッコミどころはままある△

初日で1人しかいない明らかに本物の役職が吊られたり、もっと怪しい奴が居るのに取り敢えずラキオかコメット吊っとけばいいやみたいな謎の采配がたまに出現。ルールに慣れてくると徐々に見えてきます。

 

論理的でない投票をする原因として単純にAIが賢くないだけとは言い切れず、投票によるキャラクターの個性の表現という側面も感じられます。

明らかに感情で投票するクルルシカやコメットの様なキャラクターもいるし、女子から異様にヘイトが高いラキオがすぐに吊られるのも笑えるので、そういう意味ではマイナスポイントではないです。どころかキャラに愛着を持たせる要素として成功しているポイントですらあります。

 

問題は「絶対に人間(敵)だ」が使えない事があること。

せめてもうちょっと柔軟に「絶対に〜」スキルを使えたらよかったのになって歯がゆさはあります。

 

自分がやられるとゲームが終わってしまう×

いわゆる墓場フェイズがこのゲームにはないってことです。

プレイヤーがグノーシアに消滅させられる、もしくはコールドスリープさせられると、その場で次のループに移ってしまいます。勝敗も分からない。

一応役割が答え合わせできる分まだマシなんですけど、せめて結果を教えてくれよ!というのが正直なところ。

 

そもそも実際の人狼では自分が犠牲になっても自陣営を勝利に導くことが出来れば勝利なので、やや理不尽さを感じます。

一部の特殊ルールとしてならアクセントとしてはいいんですけど、常に自分の危険も回避するハードルを背負っているのが若干枷に感じました。そのせいで特に狂人にあたるAC狂信者の難易度が大きく上がってます。

 

おそらく自分がやられるとその場でループするのが自然だから、物語性を重視した結果なんでしょう。

ストーリー的にそこが重要じゃないってのもあるんですが、それとは別に勝ったか負けたか位は教えて欲しかったですね〜。

経験値はサバイバルボーナスとかで別判定で付与してあげればよかったと思います。

 

終盤の中弛みをどう取るか

中盤から終盤にかけて、イベントサーチを駆使してもなかなかイベントが出ないタイミングがそこそこ多発します。

進展がなさすぎて正直続けるモチベーションが湧かないくらいまで来てたんですが、人狼ゲーム自体は面白いので惰性でなんとかプレイ。ダラダラ続けてるうちに終盤のイベントが一気に進み、そこからはエンディングまでやめどきがなくプレイしました。

マイナスポイントといえばマイナスポイントなんですけど個人的にはループの苦痛を体感させられるいいポイントだと思ってます。

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ただこれは、人狼自体がかなり好きな人はずっと楽しいかもしれない。

なので中弛みを感じるかどうかは人に寄るとは思います。

ストーリーを進めたいというモチベーションでプレイしていると中盤はちょっとキツい。正直ちょっと根気がいるレベル。でもクライマックスのいいスパイスにはなります。そんな感じ。

 

 

まとめ 奇跡(9.6/10)  メタな物語が好きなら

  • 1人でできる人狼
  • 超1級品のメタフィクションストーリー
  • 遊べば遊ぶほど底が見えないイベント群

 

たとえ人狼を知らなくてもアドベンチャー好きには頑張ってプレイしてほしい。真エンディングの感動を共有してほしい。この終わり方には他にはない余韻があります。

システムは斬新なのにそれを感じさせない入りやすさだし、並行世界の表現や、自然なメタ物語など凄いことがさりげなくてんこ盛りにされているゲームでした。

人狼を頑張ってこそのエンディングなのでネタバレ見てもあんまり感動は薄れないと思うけど、気になった人はあまり調べずにクリアまで挑戦して見てほしいDEATH。

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ループものとしては以下も抑えておきたい