ラスボスまでクリアしたのでレビューします。
丁寧に作られており、PVで刺さった人の期待にはしっかり応えてくれるいいゲームだと思います。
見た目でわかりにくいのでどんなゲームかという点を中心にレビュー。
特筆ポイント
尖ってるけど非常にシンプルなRPG
レベリング・マップ埋めが好きなら神ゲー
ショートカットの戦略を楽しめるかがゲーム性のキモ
どんなゲームか?
システムはいたってシンプル
非常にオーソドックスなマス式ダンジョン探索+コマンド式RPGです。
エンカウントは黒い数字が書かれた敵のマスに止まることによって発生。基本的に強制エンカウントはありません。
バトルはFFでおなじみのATBによる行動順性を用いております。
コマンド内容も、装備武器で攻撃するか、パーティ共有の強力なアビリティを使うかの2択のみ。非常にシンプルな内容。
ステータス強化はレベルアップがメインではなく、基本的にはより良い装備品を付けていくことによってキャラが強くなっていきます。ただし、いい装備品にはコストがかかるので、そのキャパを上げるためにレベルを上げる必要があります。
要するに
レベルを上げて、装備を良くする→キャラが強くなる!
が基本ルーチン
装備品によって決まる防御力ゲージ
装備で特徴的なのが防御力のシステム。
防具に設定されている防御力をゲージで表現していて、戦闘中は敵味方ともに防御もしくは魔法防御ゲージを削り切る事で初めてHPにダメージが通ることになります。
実質、防御力が「一般的なRPGにおけるHP」のようなもので、今作におけるHPは「サガシリーズなどのLP」に相当するようなものと言えますね。
防御力は戦闘毎に回復するので、HPにダメージを与えられる前に敵を倒す事が前提のバランスです。
一部特徴的ではあるものの、実際プレイしてみると非常に直感的な戦闘システムです。
はじめは誰に何の武器種を装備するかでパーティの戦力バランスに頭を悩ませはするものの、一度決めちゃえばそのまま固定で通せる上、キャラによるステータス差も進行にに影響が出るレベルではないです。パーティはほとんど好みで決めてOKな調整になってます。
いかにショートカットを楽しめるかがカギ
じゃあレベリングして武器を付け替えるだけのゲームのどこに面白みがあるか?
結論から言えば、めんどくさいレベリングを飛び級する快感。これに尽きます。
装備偏重のシステムなので、適正レベルよりちょっと深めに潜って強い敵を倒していい武器をゲットしてくれば、キャラクターが大幅に強化できることになります。格上の敵相手にレベリングができるようになり、結果的に大幅に時間をショートカットできます。
当然リスクもでかくなるわけですが、必要な情報は敵の情報図鑑であるバトルブックとイベントリストという形で事前に収集可能です。
とりあえず行ってみて死んでから考えるというゲーム性ではなく、しっかりと戦略を練って絶対負けない様に思案する方向性です。
で、それが非常に楽しいんですよ。
格上を安全に倒すために敵のステータス情報とドロップアイテムをにらめっこしながら付け入る隙を探すのが本作のキモとなる楽しさです。
この飛び級の快感こそが、本作のコンセプトとして語られている「考える」バランスの意図するところと言えます。
この事は探索に便利なアビリティが、最も必要になる階層よりも少し深めの場所に配置されている事からも明らか。少し危険を冒して深めの場所に潜ることでスムーズにレベリングを進められる事が、基本設計になっているといえます。
横着するほど危険が増える
問題はショートカットに失敗してしまい、深めの場所で全滅してしまった時。
このゲーム、パーティが全滅してもすぐにゲームオーバーにはなりません。
なんとばっちりオートセーブされた上で、控えのメンバーで死体を回収しにいく必要があります。
戦闘自体は簡単に避けられるので、控えの弱いメンバーで回収すること自体は容易なんですが、戦闘を避けながらの回収はぶっちゃけメッチャめんどくさい。
つまり時間的なリターンを得ようとした結果、失敗すると時間的なペナルティを支払わされるわけです。
この駆け引きが一般的なRPGとは違うアクセントになっており、本作の最も特徴的なポイントです。いかに考えながらショートカットを刻んでいくか、はたまた地道にレベリングで階層をあげていくか。戦略を能動的に練られるようになっています。
ただ、素直にレベリングするとめちゃくちゃ面倒なくらい時間が掛かるのでほとんどのプレイヤーがショートカットをどこかの階層で考えるバランスになっているという事は明記しておきます。
ちなみにメンバー全員が全滅すると晴れて(?)ゲームオーバーとなるわけですが、レベル引き継ぎでニューゲームになります。つまり、いつかはクリア出来るように作られています。ローグライク系のようにプレイヤースキルが伴わないとクリア出来ないタイトルではないので安心してください。
また、この事からも本作は難易度と時間的コストを天秤にかけるタイプのゲーム性を持っていると言えるでしょう。
横着した分だけ、危険が増えるってコトです。
マップ埋めに喜びを見いだせるか
戦闘をメインに書いてきましたが、必要なのはレベリングだけじゃありません。マップを一マスずつ踏破して埋める事により、特典としてアビリティの装備キャパが増えていきます。
便利なアビリティを装備するにはマップを埋める事も必要不可欠になってます。
マップ埋めに関しては後半で救済措置と言える便利アビリティもあるので苦痛が伴う様なレベルではないです。ある程度肯定的に作業を楽しめる人なら余裕なレベル。
どんな人にオススメか?
- レベリングが楽しめる、もしくは格上の敵に戦略的に勝ちたい人
- マップを一マスずつ埋めるのが好き
な人はきっと本作を楽しめると思います。
RPGでコツコツ作業することに癒される人や、シミュレーションRPGで頭を捻りながら格上への戦略を組み立てるのが好きな人にとっては楽しめる要素が多いです。
逆にRPGにキャラクター性やシナリオの盛り上がりを求める、ビジュアルやアニメーションがないとテンションが上がらない人は絶対に楽しめないので、やめておきましょう。
ただ、最低限の設定らしきものは用意されているのでTRPGが好きだったり妄想が好きな人にとっては物語性も楽しめるかもしれません。
プレイ時間/ボリューム
ラスボスまで倒して35時間くらい。
システムをしっかり理解できたのが40階層くらい。そこからはちょこちょこ飛び級しながら進めていったため、以降サクサク進みました。
階層の数よりも、「どの段階でシステムを理解して、飛び級をどこまで挑戦するか」によってプレイ時間は大きく変動すると思います。RTA向きのタイトルですね。
仕様を理解すると難易度が一気に下がるので、基本的には攻略は見ない事をお勧めします。
ただし数値問題に関しては事前知識がないと解けない(数学的知識)ので注意が必要です。こればっかりは攻略に頼るのも致し方ない面を感じました。なにかしらゲーム内で完結させる手段が欲しかったですね。
感想/総評
硬派で尖ったタイトルに見えますが、インターフェースや戦闘システムなどは丁寧に調整されており遊びやすいです。
後半に掛けてシステムを理解してくると、バトルスピードやアビリティの選択システムなどモタつきを感じる要素も一部でてきますますが、全体としての触り心地は非常にいいです。
非戦闘時のBGMは基本的に環境音しかないこともあいまって淡々と、しかし黙々と熱中させる中毒性があります。やめどきを見失う吸引力を感じました。
パッと見のローグライク的な印象とは違い、地道にレベリングしていけば誰でもクリア出来るシステムです。自分でどこまで深めに潜るかによって難易度を能動的に選択できるところは上手く練られていると感じました。
時間的コストを賭けてショートカットをするというゲーム性を楽しめれば濃い時間が過ごせると思います。
難易度に関しての補足として、一部に初見殺しや理不尽死があるんですが、こういうマゾゲーが好きな人にとってはご褒美の範疇です。サガシリーズを彷彿とさせるエッセンスがありニヤニヤ出来ます。
バトルBGMに関してはエレキギター一本というかなりの尖っぷり。非常にコンセプチュアルで面白いです。ただ、エレキだけである説得力は明確に感じられず、個人的にはアコギも取り入れるくらいのダイナミクスは欲しかったなぁというのが正直な所です。実際に静の要素を持ったBGMがあったので強く感じました。全曲クラシックアレンジなのはコンセプトに非常にマッチしていると思います。
ストーリーやキャラクターに関してはマジで最低限の設定しかない潔さなんですが、設定自体は結構な濃いめの味付け。絶対に詳細が語られないであろう背景のストーリーに想いを馳せるのは中々悪くないです。JRPG的文脈の知識があるほど楽しめる、大人向けのポイントです。
たまにこういう硬派なゲームがやりたくなるんですが、その中でも取っつきやすい部類でした。エンディングとしての区切りもキッチリあり、走り切って終われる非常に自分好みなゲームでした。
いいポイント・微妙なポイント
いいポイント
- ショートカットによる難易度の選択性○
- ネタ要素としての豊富な初見殺し・理不尽死○
微妙なポイント
- 作業に使えるマーカー機能が欲しかった△
- アビリティの操作性が不便△
UI周りの不満点。
このモンスターかこのモンスターのドロップを狙おう!って時にバトルブックからバトル番号を色変えしたりマーキングする機能があればかなりスムーズにレベリングができたなぁと。いちいちバトルブックを開き直すのはちょっとダルかったです。究極的には自分でノートを取るのが最良の解決法でした。
アビリティ選択UIにおいてはシンプルに作りが悪い。
- バトルの早送り機能が遅い△
早送り最大でもモタつきを感じます。ブレイブリーシリーズくらいの狂ったスピードが欲しかった。
- 知識がないと解けない数値問題くん△
普通に数学的知識を要求される。
考えても分からないならそもそも知らない可能性があります。注意。
今の時代のゲームならさすがにゲーム内に情報を置いて欲しかった。