はじめに:クリア時間
クリアしたのでレビューします。
1周は3時間くらい。2周目以降は2時間前後で、最終的にチャレンジを全て埋めるまでプレイしたので10時間弱くらい遊びました。
つまりしっかりハマったわけですが、その一方で、不満点も見えてきたのでその辺りも含めてレビューします。
ざっくり特筆ポイント
- BGM・世界観◎
- 数々の暗喩によるオブラートに包まれた闇のキレ
- 一度きりの体験か、ループを繰り返してベストエンドを目指すか、はプレイヤー任せ
- 自由度はあるがどう遊んで欲しいかの導線が薄く、遊び終わるタイミングが分かりにくい
総評
不思議なお花がある日うちに飛び込んできて、植えてみたらアラ不思議。お花が喋りかけてきた。
「とびっきりの一日を目指そう」
という、どっかで見た感じのお花さんがナビキャラとして登場する、どっかで見た感じの導入から始まるADV。
システム的にはアイテムをやりくりすることで進行する、オーソドックスな脱出ゲーム的アドベンチャー。
システムは単純だが、細かなミニゲームが手を変え品を変え挿入されて飽きさせない。
ビジュアルやBGMが良い事も手助けして1周目はストーリードリヴンのADVが好きなら非常に没入して楽しめるだろう。
魅力的なBGMや世界観
中でも低音がしっかり載ったアコギのBGMは、とある一日の時間経過を見事に表現していて素晴らしい。ゲーム開始直後における朝焼けのシーンのワクワク感だけでも雰囲気ゲーとしての価値は十分に体感できるだろう。
また世界観の作りも特筆すべき要素だ。
冒頭で登場する河原を始めとした、幽世の暗喩と取れるモチーフや登場する花の花言葉が持つ意味など、非常に多くの比喩表現が闇を感じさせる。
舞台となる街すらそもそも現実なのか、あの世の光景なのか、と惑わせるような作りと言え、幻想的で蠱惑的。深読みが好きな人には魅力を感じられる世界観となっている。
どこまで遊べばクリアか
問題はこのゲームを何周するかだ。
結論から言うと遊び方が分かりづらい作品である。
どこかで見た様なお花のナビキャラ宜しく、このゲームのエンディングもふつうのルート、完璧なグッドルート、闇が深いバッドルートと3ルートに分かれている。明らかにアンダーテールオマージュである。ただし、本作はどういう順番でプレイしてほしいかが見えてこない。
完璧なルートを辿ってもモヤモヤする要素が多数残り、これで大団円だと言えるほど劇的なシナリオがあるわけではない。
むしろ闇が深いルートの方が演出にキレがある。初めて知れる真相もあり、カタルシスが1番強い。だがゲーム内では完璧なルートを目指す様に促される。
上記の要素からどこで区切りをつければ良いのかが中途半端に感じた。
不親切な周回要素
やり込み要素としてチャレンジ項目が用意されているが、周回プレイへの配慮の薄いシステムが問題となってくる。
まず任意でセーブができず、オートセーブ仕様により一度選んだ選択肢はやり直しがきかない。スキップ機能もないため選択を間違えるともう一度始めからやり直すしかない。
一周は2時間前後でクリアできるとはいえ、ほとんど同じ内容で周回を重ねるのはなかなか辛い。
そのためチャレンジ埋めは苦行の領域に片足を突っ込んでいる。
オススメの遊び方は
オススメの遊び方は情報を見ずにカジュアルに一周目をクリアしたら、闇ルート→完璧ルートを攻略情報を見ながら進める事。
細かなフラグがたくさん用意されており、ちょっとしたセリフの変化は色々とある。だが、それらを楽しむにはリプレイ面で不便&時間を無駄に消費する要素が多すぎてやや割りに合わない。
不親切な仕様にイライラする前にやめてしまえば、雰囲気のいい素敵な一日を体験できるADVとして非常に楽しめる作品だ。
良かったポイント・微妙なポイント
良かったポイント
- 幽玄で美麗な箱庭世界のビジュアル◎
- 癒しのアコギBGM◎
- 深読みしがいのある暗喩満載の世界観○
- いい子にも悪い子にもなれる自由度と多彩なフラグ変化○
微妙なポイント
- 物語やメッセージ性が曖昧でパンチ薄△
- どこを持ってクリアとするかが分かりづらい内容△
- 多彩なフラグ変化と噛み合わない周回プレイ時の不便さ・不親切さ×