1年くらい積んでしまっていた『ワールドエンドシンドローム』クリアしました。
クリア時間はプラチナトロフィーまで取って30時間弱。
でもシステム的にリトライがもたつく仕様のため時間がかかっただけで、本編だけだともうちょっと短いです。
とは言っても、長めのプロローグ&ヒロイン5人分&最終章という構えなのでボリューム感はそこそこあります。
概要&ジャンル
本作は「ミステリー×恋愛ADV」という触れ込みで売り出されたノベルゲーム。
生者に紛れ込む死者・黄泉人の伝説が残る町・魅果(みはて)を舞台にした物語です。
形式としては、
- 夏休みまでの2ヶ月とバッドエンドを描く序章
- 5人のヒロインとの恋愛アドベンチャーの本編
- 総括的な真相編
という3段の構成。
大枠としては伝奇ミステリーであり、そのメインとなる「本編」部分に恋愛アドベンチャーが内包されている形。
夏休みを繰り返して惨劇を回避していく形ですがループものという訳ではなく、最終的な真相が発覚する1ルートに至ります。
蘇りという伝奇要素を含みますが、“怪異が何故起こるのか?”と言うところは重要視されず、“そういうもの”として扱われ、それよりも誰が黄泉人なのかや、バッドエンドとなる序章で何が起きたかを探る方向性。
本編はギャルゲーとしては古風な、目的地を選択してヒロインに会いに行く方式。
はじめはノーヒントですが、周回の度に履歴が蓄積されていきます。ただ、ヒロインが変わると微妙に状況が異なってくるイベントも多く、基本的には総当たり式のトライ&エラーのプレイスタイル。
ヒロインを攻略する度に、各ヒロインの抱えている秘密が明かされると同時に、町の謎が増えていくのでシナリオの吸引力は強めです。
ヒロインの攻略順はやや誘導される形で、半固定式。
ヒントも分かりづらく、やり直しのコストもデカいので、ぶっちゃけルート順だけは攻略を見てしまった方がいいと思います。
各登場人物は連続性のある行動をしており、メインシナリオに関係ないところで意外な設定が明かされたり、キャラクターに深みの出るイベントがあったりと、目的地制のメリットが活かされています。
良かったところ
力の入ったビジュアル面◎
力の入った背景描写
背景にさりげなくアニメーションがある事で魅果町の空気感が感じられ、没入感が段違いです。こだわりが感じられる環境音と相まって田舎町の夏の空気感がしっかり感じられる。
本作の最も独自性があり素晴らしいポイント。
多くの背景のどこかが動いています。
バリエーション豊富なキャラビジュアル
またキャラクターの立ち絵のバリエーションも非常に豊富です。表情パターンも多い。表現に難を感じることがほぼないです。
ADVでは珍しい横からや後ろからのカットもあり臨場感があります。
絵柄に関しては若干クセのある絵柄なんでしょうか。
色使いが強めでどちらかといえば女性的な感性で、僕は非常に好きでした。
シナリオ◎
伝奇ミステリーとしてより、最終的には青春ものとしての良さが光る物語。
大オチを知った後、振り返ってみるとシナリオの味わいが大きく変化するヒロインがいて、丁寧に伏線が張られていた事が確認できます。
ただヒロインを攻略していくパート自体が、大枠のシナリオのストーリーテーリングに含まれているため、メインルートがあります。
つまりメインヒロインがいるということなので、恋愛要素はあくまでフレーバーとして楽しめる人向きかなと。
主人公は最近ちょっと珍しいくらいウジウジする暗い子なんですけど、そこに至ったある過失がちょうどいい塩梅で叩きやすい内容で絶妙な加減だと思いました。主人公の過去に関しては正に今の時代ならではのテーマで興味深かったです。
キャラクターの魅力◎
ヒロインにはそれぞれ抱える秘密があり、それが見えてくることで各ヒロインの魅力と田舎の閉塞感をうまく表現しています。
シナリオ攻略に必要ない場所でもそのヒロインらしい行動をしていたりするので、サブイベントを拾っていくのも発見があって楽しい。
サブキャラも個性が強くて魅力的なキャラクターが多め。
やたらセクシーな先生やマイペースな女刑事など攻略対象じゃないけど魅力的なおねーさん率高め。
微妙なところ
セーブ&ロードのリトライ性の低さ×
各行動終了時にしかセーブ&ロードができません。
メニューはいつでも開けるけど、メニュー内にロード機能がなく、一度タイトル画面を経由しないとロードが出来ません。
しかもPS4標準のセーブフォーマットをいちいち開くのでリトライ性がめちゃくちゃ効率悪いです。
システム上、攻略ややり込みがどうしても総当たりになるのでセーブ&ロードのもたつきがクリティカルに足を引っ張っています。
シナリオの出来に反して再読性も×
セーブに関しては不親切な点が更にあります。
ルート名が書かれていないので各ヒロインのストーリーを見返したくても情報がないので分かりづらい。クリア後にも回想機能なども無いです。
真相を知った後、色々見返したくなる物語なんですけど、この不親切な仕様でちょっと足が重いです。振り返りたいポイントいっぱいあるんですけどね...。
サクサク進めたいのに動作が重いのも拍車を掛けていて、スキップのスピードが遅め、日をまたぐカレンダー演出の硬直が長いなどの要素も足を引っ張っています。
また前述の通り、既読イベントMAPのアイコンが青色に変化したりキャラマークの履歴が付く仕様になっています。
ところが、ルートを跨ぐと青色アイコンでも未読の文章が出現したり、アイコン内にある複数の地点全てを回っていない状態でも青色に変化してしまうなど、ほとんど信用できない。コレクションアイテムを集める時はほぼ総当たりでやりました。
無理やり感のある恋愛要素△
各ヒロインを平等に扱う弊害なのか、恋愛に発展するのにちょっと唐突感のあるキャラクターがいます。
最終的な真相ルートが存在するためメインヒロインが存在してしまうわけなので、ルートによっては無理に恋愛に絡めない方がいいシナリオになり得たのではと感じました。
もちろんビジネス的に恋愛を謳った方がいいという判断があったのだろうと想像できますが、上手く丸められずどっちつかずになっているキャラクターが発生してる事は残念。友情仲良しエンドでも全然エモかったと思います。この辺りはネタバレパートで。
総評 7.2/10 キャラよしシナリオよしセーブ×
ヒロインはみんな魅力的でビジュアルもかわいい。各ヒロインの背景を見ていくと魅力が増すので夏休みを何度も繰り返すシナリオはマッチしていると思います。
シナリオもヒロインの秘密でそこかしこに驚きがあり、長尺だったけど最後まで楽しめました。
そういった魅力とは対象的に、セーブロード周りのUXが非常に残念。
ボリュームの多さと噛み合わずクリティカルに足を引っ張っています。収集物やミッションなどの楽しませる要素がふんだんに用意されているだけに余計に目立ちます。改善されていればゲームとしての評価は全く違ったものになっていたと思います。