南極ゲーム観測所

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【ネタバレあり】ラスアス2クリアしたので言いたいことを好きに書く【感想と考察】

クリアしました。すげぇ良かった。

荒れるのはわかる。正直あまりフェアな作品じゃないと思います。でも個人的には大好き。

 

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クリアしたてなので、とにかく他の人の意見を入れずに自分の想いをうおおおおって書き殴っていくので色々間違ってるかもしれない。後日整理したものをあげ直すかもしれません。

これを過去終わった後他の人のレビューとか開発者インタビューとか見ていきたい所存。

 

もちろんネタバレ全開です。

未プレイで見ても責任とりませんよ〜!

 

 

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Part2の是非

蛇足を心配していましたが全くそんなことがなくて安心しています。

楽しかったし気持ちよかったし、悲しいし虚しい。とにかく感情を乱されるゲーム。

1部違和感のある要素もありますが、思想の内容よりも語り口の素晴らしさや技術を評価されるべき作品だと思うので重要ではないと感じました。理解は出来ないけど理解したいとは思う。そう思わせてくれる作りを評価したい。そんな感じ。

 

前作のタイトル画面

前作のタイトル画面、ディーナが去った後の農場の家ですね。エピローグで入った瞬間鳥肌が立ちました。

まさかここだったとは。上手く繋げましたね。

実際どうだったのか、今後どうなるのかは置いておいて、この物語がこれで幕引きでありここまでがセットの物語だった事を、説明せずに語る上手い閉じ方です。

 

 

 ここらへんから本格的なネタバレ。

 

ジョエルの死

前作の主人公のリタイアはシリーズ物の場合、大抵ショッキングなものですが、ジョエルにおいては続編が出る時点である程度覚悟していましたし、まあそうなるだろうな...。という感情。思ったより早かったけど…。

個人的には前作の最後の振る舞いはずっと引っかかっていたので残念ながら当然。前作であなたは何人の命を奪ってきましたか。復讐されて然るべき行為でした。

もっと言うと今作はプレイ中はジョエルの行いのツケをエリーが支払わされている物語なのかな、と考えていました。

前作は都合よく奇跡が起こっ針の穴を通すような奇跡の上に成り立った物語のはずです。決して褒められるようなものではなく、とはいえ誰にも責められるようなものではないジョエルの行動だったからこそ心打たれたはず。ヒーロー物語ではないです。殺されて当然の男なんですよ。アビーは当初逆恨みってオチだろうなって思ってましたが、言い逃れの出来ない立場でした。

だからこそジョエルが復讐によって命を落とすというのは物語構造としてある意味当然。しかもアビーの父であるファイアフライの医者を撃ったトリガーは、マーリーンとは違いプレイヤーによって引かれたものです。撃ちましたよね?物語の本質ではブレてないと思うんですよ。

 

問題は、エリーがジョエルの為に復讐していたのではない、というところ。

 

エリーの本心

正直に白状すると僕はエリーの心情を前作の時から一切理解出来てませんでした。

前作の最後のセリフ「わかった」について、

考察サイトを見て初めてジョエルに対する不信を表現したのだと知ったくらい。てっきり妥協して一緒に生きていく事を、決意していたのだと思ってました。

いや、というか今作でもぶっちゃけ分かんなかったわ。ごめんなエリー。

でも最後の最後、大粒の涙を流しながらジョエルを思い出し、アビーを許したシーンで初めて少しだけ気持ちに寄り添えた気がします。

 

彼女が思い出したのは、正確にはジョエルに言った言葉、

「一生その事は許せないと思う。でも許したいとは思ってる」

という言葉でした。

 

これは前作での「わかった」の真意を、本人の口から初めて語られた彼女の本心です。

2年前の病院ではジョエルを拒絶しただけで何も語りませんでした。

前作のストーリーの終着点が、続編の最後の最後に語られるとんでもない構成。

 

その直前、

「あたしはあの病院で死ぬハズだった!生きたって証を、残せたのに。」

と語っています。

エリーは死んで証を残したかった。それを奪ったジョエルを許していない。

 

推測できる面はありますが、エリーの本心は実のところ本編では全く本人の口から語られていなかったわけです。

 

キャラクターの本心を語らないまま、目的を明かさないまま、プレイヤーにリニアな物語を強要しているとも捉えられ、ここは批判されるべき点かも知れません。

でもラストオブアス全体がこの言葉を聞くためのストーリーだったのではないかと思っています。

結局、最後まで自分の気持ちを言葉にはしてくれなかったな、エリー。

せめて言葉にさえしてくれればディーナも分かってくれたかもしれないのに。

 

で、そうやって全てを捨てたエリーが復讐劇の最後の最後にジョエルの言葉

 

「もしも神様がもう一度同じチャンスをくれたとしても、俺はきっと同じ事をする」

 

を思い出し、「許したい」という自分の気持ちに向き合ったところでこの物語は幕を閉じます。

 

奪われた尊厳との向き合い方

ずっとジョエルのために戦っていたと思われたエリーですが、最終的に

自分の尊厳が踏みにじられた時、どう向き合うのか?

という物語だったと理解しました。

 

ジョエルが殺された事でエリーは、許したいという気持ちを昇華させる機会を永遠に奪われた事に怒っていたのだと思います。許せなかった事を悔やみ続けている。その機会が失われてしまった事が許せない。だから怒り続けている。

守れなかったやりきれなさもあると思いますが、それだけであればディーナに止められた時、どうして踏みとどまれなかったのか。彼女もジェシーを失って、それでも前を向いて進もうとしています。一緒に進む事がなぜ出来なかったのか。それは条件が違うからではないか。

 

自分の生きた証を奪ったジョエル。

それに対する怒りを昇華させる機会をジョエルごと奪ったアビー。

 

もちろんジョエルに対する愛もあったでしょう。でなければ「許したい」という気持ちには至らない。

でも彼女を復讐に駆り立て続けたのはジョエルへの愛とは違うものでしょう。奪われた機会、奪われた尊厳のため。死に方という生きた証、自分の権利のためです。

 

ジェシーを奪われても舞台に登らなかったディーナ。

ディーナに愛されながらも踏み留まれなかったエリー。

レブのために舞台を降りたアビー。

 

エリーはずっと自分のために戦って、最後に自分自身の本心と向き合って復讐を諦めます。これがラストオブアスという物語。そのように解釈しました。

 

詰まる所、自分の尊厳とぶつかる他者との、折り合い付け方の1ケースを描いた物語ではないかと思います。

復讐がどうこう、とかいうストーリーではない。

ジョエルを認めて、折り合いをつける。相手に意思がある事を認める。だからアビーを見逃した。アビーを許したというのはエリーにとっては結果論だと思われます。

 

エピローグ、ディーナは家を出て行きます。

彼女はエリーに向き合い続けていましたが、エリーは最後まで自分の気持ちを口に出して伝える事が出来なかった。だから2人の生活は終わり、物語も終わります。ギターももう弾けず、自分の証はもう何もない。今まで事を語り継ぐはずのJJももう居ない。

最後に歩き始めたエリーの姿が唯一の救いですけど、どうなるんでしょうね。死ぬ事で残す証ではなく生きる事で証を立ててほしいです。

 

もう1人の主人公・アビー

アビーに関しては非常に魅力的なキャラクターだと感じています。一方、筋肉が記号的と捉える面もあるみたいです。

彼女は復讐に4年費やしたというバックボーンがあり、そもそもが、かなりがっしりした体格です。復讐の理由も複雑なものではなく彼女の環境を想像できれば至極真っ当なもの。

 

むしろ語る順番が悪かった。

最悪といっていい。

そしてそれは意図的なものです。

 

ストーリーテーリングは恋愛の様なもので感情移入は早い者勝ちです。先に語られた方が圧倒的に好かれやすい。

後から語られる敵役に至極真っ当な復讐の理由を持たせる事は、強制的に双方の視点をプレイヤーに持たせる事になります。そしてその狙いは最後までプレイすれば成功していると思えます。

 

ただアビーを操作する場所はプレイヤーが操作したい(と誘導されられている)側とは見事に逆に配置されています。

 

操作したくないキャラクター・押したくないボタンを押させる「ゲーム」

最初にプレイヤーの望みから乖離を始めるのは、エリーの復讐劇がアドレナリンを増してきたところで水を差すように挿入される、ノラ(被害者)視点での拷問QTE。

以降、プレイヤーの望まない視点での暴力操作を強制されるシーンが意図的に配置されていきます。

初回は絶望感を持って迎えた劇場でのアビー襲撃シーンは、アビー視点に反転後、アビー操作のままエリーを追い詰めます。一度ムービーに戻った時点で絶対操作反転すると思ってましたし、そう思わせるように出来てます。

そして最後に、磔にされ痩せ細った死にかけのアビーを痛め付けるラストシーン。

恐らく全てプレイヤーが望む「ゲームプレイ」とは逆の視点から暴力を度々強制されます。プレイさせられる。

これによって没入からは程遠い、物語をキャラクターの外部から見せ付けられるという構造になっている。

「暴力はダメだよ!」っていう、うっすい主張なんかではなく、「お前、いいからそこで黙って見てろ」って蚊帳の外に急に放り出されるわけですよ。それも自分の押すボタンによって。それが凄い。

操作を強制させるというゲームの自己批判性が含まれる手法を、「プレイする事で没入から遠ざかる」というゲームにしか出来ない物語り表現で見事に昇華させています。これが物語りとしてのラストオブアス2の素晴らしいところ。

もちろん単純にステルスアクションとしてもGOTY狙えるレベルで楽しいんですけど、その技術を尖ったメッセージのストーリーテーリングの為に捧げているっていう攻め方がやばいです。

 

 

1種の幼稚さを感じる偏った属性の配置

ポリコレ問題に関しては本質をよく分かっていないですが、問題をよく知らない上での感想としては、偏った男女配置から感じる逆張りの精神、もっと雑な言い方をすると中二病のような反骨精神を感じるっていうのが正直なところ。やり過ぎて逆に不自然。

 

アビーに関しても槍玉に上がるみたいですが、彼女は先述の通り妥当なキャラクターだと感じています。

しかし他で違和感を感じるポイントは多いです。

あからさまに女性がリーダーばかりの戦闘組織の違和感。あまりにも偏った人物配置など。

強いキャラクターも全て筋骨隆々の巨大なマッチョウーマンばかり。確かにそういう人もいるとは思いますよ?でも比率としてはかなりのレア人材です。そもそも女性の強さってそういう筋肉でしか表現できないものなんでしょうか?異常にステルス察知能力が高いとか、銃が得意とか交渉が得意とかそういった事でも活躍できるはずです。前作から続投キャラのジャクソンシティを率いるマリアはそういうキャラクターだったと思います。

戦う事でしか価値を見出せないとか、男と同じ土俵の物差しでしか価値を描けないという、性差を意図的に無視した価値観や女性の描き方はただの逆張りの様で若干幼稚に見えます

 

多すぎる女性配置・多すぎるアジア人、過剰なマイノリティへの配慮。

エリーの同性愛要素は前作からあったので違和感なかったんですが、ジョッシュの子を2人の子供であるかの様に育てているシーンは若干の気持ち悪さと浮世離れした幼稚さを感じました。でもこれに関しては原因が何かがよく分かっていないので、自分の中でも噛み砕いていきたいと思います。

 

発売前はこの問題に関して一切気にしてなかったんですが、それでも偏ってるな〜と思うレベルで重要な配置に女性ばかりが目立つ。多いだけならいいんですけど戦っても強いっていうのが、ストーリー面がリアリティあるだけにちょっとあれ?って感じはありますね。

もしかしてJRPGで言う中学生が世界を救うのと同じ違和感?だとしたらもっと様式美的に捉えればいいのか?

 

アジア人のキャストの多さは露骨で前作と比べるとかなりわかりやすいと思います。映像美も映画レベルですが、キャストが露骨すぎて平等を超えてっちゃう所も映画っぽいですね。このあたりは難しいです。平等に満遍なくいろんな人種が登場すること自体がある意味でリアリティのない偏った世界な気もしますし政治的です。狙いを露骨に感じるレベルだとちょっと稚拙かなぁ。

レブの丸刈りに関しても、性別を超えて自分のしたい髪型に出来る権利を訴えたいんだろうけど、そもそも丸刈り自体に憧れる男子ってそんなにいないと思うし、主張が地に足ついてないんですよね。自分らしくありたいことと丸刈りの因果関係がピンとこないのでただの反抗心や逆張りと違いが見えないです。割と本質的なところだったのでもし明確なメッセージがあるのならもう少しヒントが欲しかった。

 

まとめ

ストーリーテーリングの技術や感情移入の手法をフル活用して、操作したくない方のキャラクターで暴力を強いられるという、もの凄く不快なことをやらされる作品。しかも標的を単身でぶち殺していくエリーの復讐劇が爽快感に富んでいるのでタチが悪い。ゲームの欠点を利用したとても出来のいいゲームです。しかもアクション面のプレイフィール自体はかなり楽しいです。

ただ気持ちいい、じゃないゲームであることはプレイすれば伝わるのでメッセージ性はめちゃくちゃに面白いし、素晴らしいと感じます。個人的にはめっちゃ好きですこのお話。

でも楽しい体験をしたいという大多数のマジョリティにとっては不快極まりない作品。ゲームは楽しいものという思い込みを利用したある意味、確信的な騙し討ちですね。

そういう意味ではフェアな作品じゃないです。プレイヤーは安くないお金を払った上でコントローラーを置くことでしかこの物語に抵抗できない。

だからレビューするなら点数は低めに付けます。好きだけど勧められないタイプの作品

そんな感じ。

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ちなみに1より好きです。というより、これでやっと物語が終わったという、前後編を見終わったような感覚です。

 

【PS4】The Last of Us Part II 【CEROレーティング「Z」】

【PS4】The Last of Us Part II 【CEROレーティング「Z」】

  • 発売日: 2020/06/19
  • メディア: Video Game