南極ゲーム観測所

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入り込めなかったアンリアルライフのフォントとサウンドの解像度 〜ネタバレあり

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結構期待していたそのタイトル。

製作者のドットが好きでツイッターのドットのを見るのが好き。

といっても熱心なファンというわけでもなく他のタイトルがあるのかどうかも知らない程度だ。でもツイッターで見かけたドット絵で心を奪われるくらいにはそのビジュアルが好きだ。

アンリアルライフは以前に開発中の告知を見たときから期待していた。

 

入り込めなかった

結論としてはあんまり入り込めなかった。いやあんまりではない。

といっても批判をしたいわけではなく。本当はレビュー記事を書こうと思っていのだけれど「ドットが神」「ふんいきがいい!」くらいの事しか書けそうになかったので筆が止まっている。書けたら書きたい。

細かい不満が多いタイプのゲームなので悪い点はばかりがリストアップされてしまう。決して悪いゲームではないし雰囲気が最高なだけに、あんまりバランスの悪いレビューは正直書きたくない。というか新サクラ大戦の時に強く思ったけどぶっちゃけいいゲームをお勧めする記事しか書きたくない。かと言ってブログをやってる以上、時間をかけてプレイしたゲームの事は記事にしたいし何も形にしないのはやはり時間が勿体無いので迷いながらこの記事を書いている。

 

ドットはどこを取っても凄まじい

語弊の無いように言っておくがドットは本当に素晴らしいし絶賛してるし称賛されるべき。

解像度の違うドットが巧みに使い分けられているのに加え、滲み・ぼかしと光の表現によるエフェクト、そして挑発的なグリッチノイズ。研ぎ澄まされた多層的で贅沢なビジュアル表現になっている。この質感は3Dやアニメ調では表現できない。構図も”映え”を意識していてスクリーンショットを撮る手が止まらないし、どこで撮っても画になる。

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妄想は出来るが共感が出来ない涙

決定的に置いていかれたのは少女がご馳走されたトーストを頬張りながら涙を流した瞬間だ。いやいや待ってくれ。こっちはまだそこまでついていけてないんだ。君が何考えてるかよくわかんないままで、しかも名前もホントか分かんないし。急になんかエモい雰囲気を出さないでくれ!せめてその心境を類推するヒントだけでもくれないか...。信号機にも人間味を感じないし誰に寄り添ったらええんやこのゲーム。あれこれ、僕の読み取り能力が悪いのか?

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もちろんこのシーンまでで背景はなんとなく想像できる。彼女はきっと何か辛いことがあったのだろう。自殺したのかもしれないし誰かを傷つけたのかもしれない。当たっていても当たっていなくてもどっちでもいい(この記事はプレイ中に書いてる)。問題はこの時点でプレイヤーが彼女に、どういう感情を持っていればいいのか、そもそも感情移入するべきなのか、それともストーリー上の謎の対象として見ればいいのか…つまり、どう感じて欲しいのかが一切わからなかった事だ。

別に批判したい訳ではなく、本音としては全く逆で、もっとそのシーンに入り込みたかったし寄り添いたかった。なぜなら表現されているビジュアルは最高だから。もしこれがツイッターに上げられた一枚絵ならきっとこれだけでグッときたのではないか。きっとそうだ。でもこれはゲームなのでストーリーがある。でも背景がよく分からない。だから入っていけない。かなしい。こんなに綺麗なドットなのに。

 

ドットは表現に限界がある手法(だったの)で、隙間を自分の想像で埋められる利点がある。もしかしたらある程度ストーリーを補完する能力が求められているのかもしれない。

そういう意味ではドット時代のサウンドにも同じことが言える。ファミコンは8bitサウンドやチップチューンと言われるピコピコサウンドである。劇中のシューティングゲーム『VOLTA』のBGMがそれだ。楽器の音色を表現するのなんで土台無理な話だ。まだドットがメインストリームだったスーファミに至ってもサンプリングされた音はお世辞にも品質が良いとは言えず、辛うじて“それっぽい”音色を表現するのが精一杯だった。

だから想像力で補完した。みんな脳内にフルオーケストラ楽団を飼ってたはずだ。

アンリアルライフの音楽はどうかというとかなり“自由”だ。物静かなピアノサウンドやアンビエントシンセを主体とした雰囲気に合ったBGM。ベルやリードシンセもある。音色的な制約もないし、音質(極端なことを言えばビットレート)の制約も全くなさそうに見える。そこが映像とは違う。なんなら効果音もハイファイ寄りだ。でもジャンルの傾向は分かる。ふんふん、そういう静かでエモい感じね〜。すきすき。

ところが中盤ピンチを煽る描写でノリノリな4つ打ちが来たタイミングで完全に取りこぼしてしまった。

置いてかないで、と思った。

別にドットだから8bitサウンドがよかったという話ではなく、解像度の制約が“なさそう”に見えてしまうって点が重要だ。ジャンルが予想外にノリノリな上にあまりに語りすぎる楽曲が来てしまったので、目指す指向性が全く見えなくなってしまったのだ。今までストーリーとビジュアルが隙間を語らなかったのは何だったのか。

だったらこれ、ドットである必要ある?いやいや...むしろこのドットが好きだったハズなのに。僕は何を言ってるんだ。

なにかもう少し物差しがあったほうがプレイヤーは想像を働かせやすかったのでは...。

 

そんなのお前の好みじゃねーか!と言われればその通り。

でもこの解像度の問題、全く言い掛かりでは無いと思う根拠が2つある

 

2つの曖昧な解像度

フォント

1つはオプションのフォント選択機能。

恐らく元々はドットフォントだったものを読み易さのためにスムーズが追加されてるんだろうと想像している。

でも選べるくらいなら最適解だけを強制してほしかったし、むしろ読みやすいドット1択にしてほしかった。背景の文字はドットだし統一された方が美しかったと思う。ここに実現したい事と実利の迷いが見える。そしてこれはサウンドコンセプトでも似たような事が起こっている様に感じる。

 

ボイスサウンド

それがボイスのサウンド表現で、解像度的にはチープと高精細のかなりまだらなところの表現になっている。

ボイスにおけるサウンドの解像度が低い例で分かりやすいのはドラクエのポポポ...、で、最も高いのはフルボイス。

ドラクエ的な効果音の解像度を上げていくとキャラによってポポポの種類が変わる表現になるし、逆にフルボイスの解像度が下がるとパートボイスという事になるだろう。そして、中間地点にいるのがどうぶつの森的なボイスサンプリングをSE的に使用するパターン。ふぁふぁふぁふぁ…ってやつだ。本作はこれにかなり近い表現。

どう森でなんでこの表現なのかはややこしくなるので今回は置いておいて、この作品においてなぜこの表現なのかを考えたが思いあたらなかった。どうしてもフォントと同じように縛りがなく、解像度の自由だけがあるという状態に感じられてしまった。いまいち指向性を感じれらない。

これがポポポ...ならあるいは無音なら、世界観的またはシステム的にそうせざるを得なかったのだなと腑に落ちる事ができたのにその逃げ道も封じてしまっている。全体的になんかよさそうだったから感がある。それでしっくりハマればよかったが...。

 

上記2点はもちろん明確な狙いがあるのかもしれないがそれは分からない。自分の読み取り能力不足を嘆くしかねぇ。

 

おわり

という訳で長々書いてしまったが、要するにこの作品の目指す方向性を上手くキャッチ出来なかったのでオススメはおろかレビューも止まっていてかなしい。ドットは最高なのに!という事だけ伝わればいいです。

 

とはいえヨカゼのコンセプトはワクワクするし、今までなんとなく存在していたものの形として定義されてこなかった指向性のブランドである。

控えているタイトルで楽しみにしているものもある。応援しているし盛り上がっていって欲しいと切に願っている。

 

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