Celesteがジャンププラットフォームを代表する「死にゲー」なら、こちらは”カタナ”がモチーフ。
クリア済み。ネタバレなしレビューです。
Katana ZERO レビュー
ジャンルと概要
Katana ZEROは日本刀を扱う暗殺者、ドラゴンとなり依頼対象を抹殺する横視点アクション。滑らかなピクセル調で表現されたサイバー裏社会はデザイン・サウンド共にスタイリッシュ。
敵も味方も一撃必殺なハイスピードアクションではあるものの、本質はシンプル。死にゲーの中では覚えで対処する範囲が大きく、配置を覚える詰将棋的な難しさ。
魅せるプレイを目指すならいざ知らず、クリアまでならそこまで難しいものではないです。極めれば銃弾を刀で弾き返しまくる超人プレイも可能。
ボス戦はかなり歯ごたえがあるものの、動きを覚えて攻略法の発見さえ出来ればアクションが得意でなくてもどうにかなる範囲。勿論、その攻略法を編み出すのが難しいわけですが。
Katana ZEROの最も特筆すべきポイントは、死にゲーに説得力を持たせた主人公ドラゴンの能力設定と、その力を引き出しているドラッグの副作用におけるグリッチ表現。
シニカルで説得力のある死に戻り演出
彼は暗殺組織から仕事を請け負う代わりに謎の薬の投与を受けています。
その薬の力が未来予知。
一瞬先の未来を、まるでVHSビデオを巻き戻しては繰り返し再生するかのように、何度も何度もシミュレーションし、成功パターンを正確にトレースすることで任務を遂行している。
そのシミュレーション中の試行錯誤が実際のゲームプレイに相当するわけです。
他の名作死にゲーの例に洩れず、リトライの快適性はかなり高い。キャラもヌルヌル操作出来るのでストレスはほぼ皆無。
主人公の正気を疑わせる数々のグリッチ・フラッシュバック
あまり言い過ぎてスポイルしても意味がないので触りに留めますが、
・ドラッグで酩酊する瞬間に音も無くシーンがぶっ飛ぶ
・連続的に挟まれるフラッシュバックにより今が現実と夢、どちらか判然としないままストーリーが進行する、など、
プレイヤーも状況が呑み込めず混乱するような新鮮な演出が目新しく、かなりクール
緩急ふり幅のあるサウンド
サウンドに関してもワンアイディア練られています。
ステージのBGMは、ドラゴンが”仕事”の開始と共に再生するプレイヤーから流れている設定。Synthwaveを軸にサイバーパンクみ溢れる縦ノリのダンスミュージックが中心。
一転して”仕事”が終わると、自宅にはゆったりとしたジャズピアノが掛かる。日課のハーブティーを1杯飲み、テレビの光に照らされながらソファに沈んで彼は一日を追える。
緩急のあるBGMは、そんな暗殺者ドラゴンの破滅的日常を見事に表現。これは他にない独特のテンポを演出している。
未完のストーリー
ストーリーは未完と言い切って差し支えないレベルで、因縁も伏線も投げっぱなしのまま終わる。すっきり完結する物語を期待する人には向かないだろう。
(アップデートの余地と思われるメッセージや、おまけステージに未使用の部屋が存在する事から、今後アップデートや続編で補完されていくものと思われる)
しかし、キャラクターは魅力的でそれぞれの過去を考察したくなる。設定の数々もあり世界観は懐が広め。
ホットラインマイアミの系譜と一歩引いたフォーカス
ドラッグと幻覚・大量殺人・死にゲー・倒錯感のあるBGMなど、ホットラインマイアミの系譜に連なるゲームでありながら、ループするアクション自体からは一歩引いたフォーカスで、ストーリーや演出を主題としたような印象のゲーム。
見下ろし型と書き割型、銃とカタナなど、相違点はあるものの、指向する触り心地はかなり近いので一方が楽しめるならどちらも楽しめるだろう。
単純にクリアまでの難易度ならマイアミよりは簡単。
まとめ 8.5/10 未完を吹き飛ばすだけのアート性がある
ハイスピードなピクセルアクションは動かすだけでも楽しい
マイアミの系譜だけど難易度的にはそうでもない
本質は翻弄される演出とストーリーを楽しむアート作品
ジャズピアノをつまみに世界観に浸ろう